『子どもの遊びを考える:「いいこと思いついた!」から見えてくること』
2023年度の日本心理学会の大会の際に購入しました。
北大路書房の方に,「子どもが小さいんで,いましか読めない感じの本があると勉強になるんですけど~」と言ったらオススメしてくれたんですよね。
なんと,修論。佐伯先生のところの修論生の修論が力作なので,本にして,でもちょっと分量が足りないので,評論を複数の先生から書いてもらって編著で出しました,という構成です。
しばらく前に社会学や哲学の領域で「中動態」が流行ったのに乗り遅れていたのですが,この本は子どもの遊びを中動態の考え方で考察したものです。ちなみに,縦書き。
内容面には納得でした。これの元が修論って…。おそろしい子…と思いましたが,修論の著者のほうは一般企業に就職されております。それもまたヨシ。
本書を読んで,子育てや幼児教育という営みは,もっと共同体的・関係論的な用語で語られ,実践されていくべきだと感じました。とはいえ,それは幼児教育のみで達成されることではないだろうな,とも思います。なぜなら,高校受験以降の子どもたちは能力主義(本書では関係論の対概念となります)で個別の能力を問われていくからです。高校受験や大学受験が団体戦的になれば,関係論的なままみんなで能力を伸ばして進学していくことも可能かもしれませんが,やや夢物語的です。なので,幼児教育では関係論的な実践が望ましく,また実践可能である一方で,義務教育以降と接続が悪いという現状は,単純に心が痛むなあと思いました。
また,蛇足になりますが,「子どもはよく棒を拾う」みたいなことが評論のほうであえて活字になっていたのもおもしろかったです。今度から,子どもがよく棒を拾うことに根拠が欲しいときに引用元としたいと思います。
「いいこと思いついた!」期の子どもと暮らし,なかなか読書の時間もとれず,自分が「いいこと思いついた!」になるのが難しいライフサイクルの特定の段階にあるわけですが,なんとか今年も1ページでも多く読んでいけたらと思っています。
そして,いまは「いいこと思いついた!」より年齢を下げ,よちよち歩きの子どもについての本を読んでいます。こちらもかなり勉強になります。読み終わったら紹介しますね。
『トドラーの心理学』
アリシア・F・リバーマン 福村出版 2021年
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