私家版・心理学の本棚

じょー、本を読んでいろいろ書くことを決意。

『皮膚感覚の不思議』(山口創)

『皮膚感覚の不思議』

山口創 講談社ブルーバックス 2006年

 

皮膚感覚の不思議―「皮膚」と「心」の身体心理学 (ブルーバックス)

わたしたちは、毎秒、外から送られてくる刺激を処理しています。そういうことに関する心理学が、感覚知覚心理学です。たぶん。

『皮膚感覚の不思議』は、感覚器官の中でも、皮膚に焦点を当てて書かれた本です。人間が外界から得る情報の半分以上は目、つまり視覚からであるという話もあり、皮膚感覚は、軽んじられているとすら言えます。特に現代社会では、パソコンやスマホなどの情報機器、テレビ、本や新聞など、情報を効率よく得るために、視覚をフル活用することが求められています。

そのような中で、はて、皮膚感覚、です。

幼児期には、視覚が未発達なこともあり、触って確かめることが多かった外の世界も、いまでは遠くから眺めるだけになっていませんか?

この本では、皮膚感覚が他の感覚とどう違うのか、そして、何がわかっていて何がわかっていないのか、身近な例をふんだんに使って示しています。しかも、どれも、論文を引用しながら、です。たとえば、育児本なんかには、「子どもを抱きしめてあげましょう」などと書かれていますが、根拠は書かれていないと思います。ですが、この本には、子どもを抱きしめると、子どもにどのような神経的な影響があり、その結果子どもの行動がどのように変化すると想定されるのかが書かれています。

章のタイトルも身近です。「痛い!」とか「痒い!」とか「気持ちいい!」とか。季節柄、花粉症で目が痒い人も多いでしょうが、その感覚も皮膚感覚です。

普段、当たり前と思って意識すらしないようなものを、改めて学び直すことほど楽しいことはありませんよ。

同様に、視覚を扱った本も、講談社ブルーバックスから出ています。こちらは、赤ちゃんの実験から得られた結果を中心に構成されていて、実験状況を想像するだけでほんわかします。

 

『視覚世界の謎に迫る』

山口真美 講談社ブルーバックス 2005年