私家版・心理学の本棚

じょー、本を読んでいろいろ書くことを決意。

『大学生の自己分析:いまだ見えぬアイデンティティに突然気づくために』(宮下一博・杉村和美)

『大学生の自己分析:いまだ見えぬアイデンティティに突然気づくために』

宮下一博・杉村和美 ナカニシヤ出版 2008年

 

大学生の自己分析―いまだ見えぬアイデンティティに突然気づくために
宮下 一博 杉村 和美
ナカニシヤ出版
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アイデンティティ関連、なぜかとても苦手なのでほとんど読んでいないのですが、必要があってたまたま読んだこの本はかなりよかったです。

何がよかったかというと、アイデンティティの確立を目指せというけれど、じゃあ具体的に何をすればいいの?という疑問に答えている点です。やはり、行動レベルに落とし込めなければ、それは理想論でしかありません。アイデンティティの確立自体は認知レベルの話と考えられるので、一般的に、行動レベルでの議論は少ない印象ですが、この本では行動レベルで具体的な記述があるのが印象的でした。

「大学生の」とついているので、大学生が読者として想定されていることは明らかです。しかし、大学院生のときに読んで、さらにポスドクという名のフリーターのいま、パラパラとめくって読んでみた感じでは、30歳くらいになってから読むのもひとつの読み方じゃないかな、と思います。渦中の読書と、アフター渦中の読書には、それぞれいいところがあると思うのです。アフター渦中の方が、客観的に考えられる分、「では、これを他者理解に役立てるためには?」といった応用的な観点で読める部分もあると思います。30歳くらいになれば、仕事上、大学生や新卒者と接点のある人もいると思うので、彼らの理解のために読んでみるというのもありなんじゃないでしょうか。

「わたしの発達」は一事例的であり、「誰かの発達」をそのフレームで理解しようとするのは事故のもとです。灯になるのは本だけですよ。

なお、アイデンティティに突然気づくために恋愛もいいと書いてあったので、実践を検討されている方はこの本を灯としてください。

  

『イラストレート 恋愛心理学:出会いから親密な関係へ』

齊藤勇・編 誠信書房 2006年