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私家版・心理学の本棚

じょー、本を読んでいろいろ書くことを決意。

『孤独の科学:人はなぜ寂しくなるのか』(ウィリアム・パトリック、ジョン・T・カシオポ)

 『孤独の科学:人はなぜ寂しくなるのか』

ウィリアム・パトリック、ジョン・T・カシオポ 柴田裕之・訳 河出書房新社 2010年

 

孤独の科学---人はなぜ寂しくなるのか
ウィリアム・パトリック ジョン・T・カシオポ
河出書房新社
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人はなぜ寂しくなるんでしょう?

自分なりの回答は、お持ちですか?

寂しい、という気持ちは、心理学領域において、「孤独感」という言葉で研究されています。わたしが見聞してきた感じでは、青年心理学的な研究と、社会心理学的な研究があるようです。

青年心理学的な孤独感の研究の、もはや古典的名著としては、落合先生の博士論文があるわけですが、社会心理学的な研究がかなりきっちりまとまっているものとしてオススメなのが、『孤独の科学』です。

寂しさについて、こんなに精力的に研究・執筆していたこの人たちは、きっとあんまり寂しくなかったろうな、と思います。

それはさておき、『孤独の科学』は、「孤独感」というありふれた、そしてネガティブな感情を通して、社会や人間存在について考えていく構成になっています。孤独感が心身に与える悪影響の他、孤独感が生じるのは人間のどのような性質のせいなのか、そして、孤独感を低減するために我々の社会は何をすべきなのか。これらの点について、必要であれば、大学1年生の心理学の授業で出てくるような古典的な例なども引きながら、論じています。

おもしろいのは、社会心理学的な研究をまとめても、青年心理学的な研究をまとめても、「孤独感から人間存在について考える」という点に収束するところでしょうか。やはり、寂しいというこの気持ちは、わたしだけの気持ちではなくて、わたしに至るまでの長い長いホモサピとしての歴史が、そうせしめているということです。安易な言い換えではありますが、人間だから寂しくなる、ということです。そして、わたしが寂しいのと同じように、あなたも、あの子も、あの人も寂しい。さらに、化石になって発掘されたナントカ原人だって、生きていたいつの日にかは、涙を流すほどの寂しさを感じたことでしょう。そういう風に思考を広げてくれる、究極のロマンみたいなものが、孤独感研究にはある気がします。

でも、そこで終わらずに、孤独感の低減に向けた活動も示唆しているのが、この本のエネルギッシュなところです。実際に孤独感が心身に悪影響を及ぼした結果、公的あるいは私的な医療費が消費されているのですから、人間だものとか言って看過することもできないということでしょう。

人はなぜ寂しくなるのか。

その答えから、人とつながることができる限りにおいては、その孤独感は健康である、と言ったのは、落合先生です。

『孤独の科学』も『青年期における孤独感の構造』も、とっても寂しい人には、ぜひとも読んでほしいと思います。

 

『青年期における孤独感の構造』

落合良行 風間書房 1989年 

 

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