『内なる異性―アニムスとアニマ』
ユングの奥さんが書いた本です。
ユングと、ユングの奥さんについてはこちらがわかりやすいですよ。
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内容は、アニムスとアニマについてです。
わたしも大学の授業で聞いた程度で、どんだけわかってんのかという感じではあるのですが、ユングは、「男の心の中には女が、女の心の中には男がおるよ」と言っています。男の心の中にいる女がアニマ、女の心の中にいる男がアニムス、です。
原型の話というのは、個人的には相当ストンとくるんですよね。響く、というか、じーん、というか、なんて言えばいいかわかんないんですけど、「わかる」の一言に尽きる。
しかしながら、端々に、「それってただの時代の影響じゃね?」というところもあります。
たとえば、「誰のアニマでも、だいたいは清らかな乙女とか、そういう感じだけど、アニムスは弁護士とか神父さんとかいろいろな形の偉い人として表現される」みたいなことが『内なる異性』には書いてあったわけですけど、これ、ユング派以外の解釈も可能だと思います。つまり、ユングが思想した時代には、男の職業は多様な一方で、女はほぼ家事手伝いか専業主婦だったんじゃないかと。ユングは結構いい身分だったはずなので、ユングの面接を受けた人もそれなりの身分だったと思われます。
そういう風に集まった事例から、上記のことが導き出された、とすると、「それ、実際に、男は家事手伝いの若い娘くらいしか女の地位を知らなかっただけなんじゃないの?」とツッコミを入れたくなってしまいます。
どうなんでしょうね、いまも、男性の夢に出てくる女性って、乙女とか白鳥とかなの???教えてユング派の人。
しかしながら、そんなのは瑣末なことです。
全体として見たとき、ユングの思想はとても豊かであると思います。「アニムスとアニマ」という考えだって、メッセージフルです。「人間として完成するには、異性に開かれているべきだ」と言っているわけですから。特に、男は、女のわけわかんないところと対峙しろ、というのは、いま知っても刺激的なメッセージだと思います。
現代日本、どう見ても男性性に寄りすぎですしね。それだけ、主たる構成員である男性たちが、女に対して閉じていて、成熟からは程遠いのだろうと思います。
異質なものに開かれなさい。そうでないと、強くも、やさしくもなれない。しびれるメッセージですねぇ。
他にも、ユングはいろいろなことを考えましたが、パーソナリティ心理学領域では、「外向」と「内向」という概念を出しています。
たしか、この本に、あっさりしているけれど正確な説明が載っていたと思うので、気になる人はそちらもどうぞ。
『心理学 第4版』
鹿取廣人・杉本 敏夫・鳥居修晃 東京大学出版会 2011年