『他人を見下す若者たち』
速水敏彦 講談社 2006年
「著者が一番、他人を見下している…!」という感想を抱きました。
著者の速水先生のご経歴はこちらです。
この本は、「仮想的有能感」の本です。「仮想的有能感」とは、実力がないのに、根拠もなく「俺はデキる」と思ってる状態のことです。この本が出た時点では、仮想的有能感の論文はまだあんまり出ていなかったみたいですね。
調べてみて、出てきた査読ありの無料論文は以下の通りです。(※おおよその刊行年順)
CiNii 論文 - 他者軽視に基づく仮想的有能感―自尊感情との比較から―:自尊感情との比較から
CiNii 論文 - 仮想的有能感と学習観および動機づけとの関連
CiNii 論文 - 仮想的有能感と日常の対人関係によって生起する感情経験 : 抑鬱感情と敵意感情のレベルと変動性に注目して
CiNii 論文 - 高校生における仮想的有能感と学業に関するコミュニケーション
CiNii 論文 - 高校生における仮想的有能感と対人関係との関連:—仮想的有能感の変動に影響を及ぼす要因の検討
全然関係ないけど、抑うつのうつの字を漢字で書いているの、珍しいですね。近年は、「抑うつ」で統一されているものだと思っていました。
それは置いておいて、検索してみて思ったのですが、紀要が多いこと多いこと…。びっくりしました。雨後の筍のようでした。
速水先生の関わっている論文は、自尊感情や動機づけなど、ご専門の教育心理学っぽい内容になっているようです。他にも、就職の論文があった気がするんですが、どうだったかな…。
あ、有料でした。
CiNii 論文 - 大学生における仮想的有能感と就職イメージおよび時間的展望
しっかし、読後感は最悪です。
基本的な論調は、「昔はこんなではなかった」です。本を読んで不快な気分になりたいときにオススメです。(論文はそんなに不快じゃないです。「仮想的有能感の高い人は結構かわいそうな状態にある」という論調なので。)
『他人を見下す若者たち』を読んだ他の人の感想もなかなか否定的です。
ところで、この本から得たことが2つあります。
1)紀要は、新書を書くときに引用しやすい。(だらだらとした分析の中から、気になるところをかいつまめるためだと思われる。)
2)青年は、現代社会から強く影響を受けていると見なされるので、青年を研究することで現代社会に言及することができる。(パイロットフィッシュ!)
ということで、マッド青年心理学者にならないように、自分を律して生きていこうと思います。
本日のもう一冊は、わかる人にはわかるやつです。著者つながり…とでも言いましょうか。
『SPSSとAmosによる心理・調査データ解析〔第2版〕』
小塩真司 東京図書 2011年
東京図書
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