私家版・心理学の本棚

じょー、本を読んでいろいろ書くことを決意。

『赤ちゃんは何を聞いているの?―音楽と聴覚からみた乳幼児の発達』(呉 東進)

『赤ちゃんは何を聞いているの?―音楽と聴覚からみた乳幼児の発達』

呉 東進 北大路書房 2009年

 

赤ちゃんは何を聞いているの?―音楽と聴覚からみた乳幼児の発達
呉 東進
北大路書房
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先日学会で買った本をさっそく読みました。

個人的なことですが、2月に引っ越して以降、なかなか落ち着いて本が読めなかったのですが、なんとか最近は引っ越し前の水準に近い読書量になってきました。

 

『赤ちゃんは何を聞いているの?』ですが、いわゆる「赤ちゃん学」の本みたいでした。内容的には発達系の脳神経科学とか感覚知覚心理学で、大変勉強になりました。

そうそう、「日本赤ちゃん学会」という学会があり、学会誌は「ベビーサイエンス」です。おお、わかりやすい。

日本赤ちゃん学会

 

縦書きの本なので、一般向けなのですが、研究の紹介が平易かつ詳細で、心理学を勉強したことのない人にも読みやすい書き方になっていました。

ただ、論文から結果のグラフなんかも引用していたのですが、Nが記載されていなかったのが残念でした。たとえば、各群6人でやったのか15人でやったのか、あるいは30人でやったのかで、研究の確からしさのレベルは違うわけで、そういうところも読者に判断させてほしいな、と思いました。

 

しかしながら、全体として楽しく読めるし、「その研究は赤ちゃんを育てているときにどんなところで役に立てられるか」という点が具体的に書かれていたのが大変良かったです。

個人的には、音楽療法の神経科学的な説明が読めたので満足でした。音楽を処理する脳の部位が、体の動きの制御をする仕事も兼ねているので、音楽を聞くと赤ちゃんや障害者でもいつもよりスムーズな動きができるよ、という内容です。

音楽療法って心理療法に近いけど心理学の学科で学ぶ機会がなかったので、エセ療法じゃないないの?って大いなる偏見を持っていたのですが、考えを改めることができました。その節は大変に申し訳ございませんでした。

ちなみに、音楽療法士はピアノ試験があるので、そりゃあ心理学のほうではなかなか教えないよね…と思いました。

日本音楽療法学会:公式サイト

 

『皮膚感覚の不思議』と併せて読むと、赤ちゃんと関わる際に有効な感覚知覚の知識が総合的に身につけられそうだと思いました。

 

『皮膚感覚の不思議』

山口創 講談社ブルーバックス 2006年

 

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