私家版・心理学の本棚

じょー、本を読んでいろいろ書くことを決意。

『アイデンティティとライフサイクル』(E. H. エリクソン)

アイデンティティとライフサイクル』

E. H. エリクソン(著) 西平直・中島由恵(訳) 誠信書房 2011年 

 

アイデンティティとライフサイクル

アイデンティティとライフサイクル

 

  

周りにアイデンティティの研究者が多いので、教養ということも含め、読んでみました。教科書に必ず出てくる心理・社会的危機の図とかの出典の本ですね。自分の中では孫引き度の高い知識になっていたので、エリクソンはどう書いているのかな、と思いながら読みました。

読んでみての感想は、「広々とした理論だな」というとことです。

研究界隈では、アイデンティティってすごく内的に扱われがちで、個人的には好きではなかったのです。ですが、エリクソンの書いたものでは、人は他者から刺激を受けてさらに発達することができるのだ、という視点が強調されていて、とても好感が持てました。また、臨床例などから、青年期に不適応を呈していたとしてもその後カバーできるのだ、そんなに心配しなくていいんだ、と述べられていて、大変に勇気づけられる内容だと思いました。

翻って、現代の青年心理学者は大学にいるからか、青年を型にはめて、さっさと年齢相応の大人にしたい…という下心丸出しの研究になりがちなのではないかな、と思いました。

ところで、訳者の中島さんのあとがきも秀逸です。翻訳作業中、東日本大震災で、幼子を抱えて被災されたそうなのですが、そのときに、エリクソンがこの本を通して伝えていたことが身をもって理解された、と書いているのです。

そういうふうに本を読む人のことが、私は好きです。

訳も平易で読みやすいですし、大学で心理学の授業を受けて、アイデンティティに興味を持った学生でも読めると思います。また、生涯発達の話なので、一生のうちに2度、3度と繰り返し読み、理解を深めるのもよいと思います。

かくいう私も、読んでる途中で妊娠が発覚し、また発達段階をひとつのぼってしまったようです。

まだまだ心理学が深まりそうで、楽しみです。

 

最近、こちらも出版されたようなので、今度買おうと思います。

 

アイデンティティ:青年と危機』

E. H. エリクソン(著) 中島由恵(訳) 新曜社 2017年  

 

アイデンティティ: 青年と危機

アイデンティティ: 青年と危機

 

 

 

研究に興味がある人には、こちらなんかどうでしょう。

 

『自我同一性の人格発達心理学

谷冬彦(著者) ナカニシヤ出版 2008年

 

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青年心理学全体に興味を持った人はこちらなんかもどうぞ。全体像がわかります。

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