『心理学史への招待』
なぜか2冊持っています…。1冊は廊下で拾った(研究室の大掃除で除籍された本が、「ご自由にどうぞ」になっていたのでもらってきた)もので、もう1冊はそれをすっかり忘れてAmazonで買ったものです…。
かれこれ10年も心理学をやっているのに、心理学史はなんだか苦手で、本を持っているのに読まずにいたんですよね。しかし、「心理学」というド直球の科目も担当していますし、そろそろ勉強しておかねば…と思い、とうとう開いた次第です。(ちなみに、廊下で拾ったほうを読みました。)
普通の心理学の教科書は、トピックの重要度を中心に章を配置しています。そして、それぞれのトピックについて、大きな理論から小さな理論へ、という順番に話題を並べていきます。
たとえば、有斐閣の『心理学』は、脳・知覚・学習~情動・性格・発達~社会~適応と心理療法~と並んでいて、より大きなルール(神経)からより個別の事情(臨床)という流れが見て取れます。
psychologicalbookshelf.hatenablog.com
そうやって教科書になっている内容を、それぞれの理論が提唱された時間的流れの順に並べなおしたのが、心理学史というものなのでしょう。
なので、心理学をそこそこ勉強していれば、初めて聞く専門用語はほぼ出てこないと思います。知っていることが、「時間の順に」並んでいるだけです。
ただ、時間の順に並べたときには重要な人物でも、手短な教科書を作るときには省かれていたりするので、「誰これ…」という人は結構出てきた気がします。
たとえば、有斐閣の『やさしい教育心理学』では、ブルーナーは1段落程度しか出てこないのですが、『心理学史への招待』では、本文で足掛け2ページにわたって触れられている上、コラムでも1ページまるまる紹介されています。時間の順に並べたときに、Aさん→Bさん→Cさん、と学問的影響があったときに、Bさんを紹介しないわけにはいかないけれど、Bさん個人の理論はそのあと別の理論に取って代わられて、いまは一般の教科書でもほとんど紹介されていない、というようなことがあるのだと思います。(その点、ブルーナーは一般の教科書でも名前を見かけるので、偉人ですね。)
個人的に、統計は苦手だけど統計の歴史の本を読んで、統計学者たちの人間関係を垣間見、少し統計への苦手意識を減らせたという経験があるので、『心理学史への招待』も、心理学の勉強が少し進んできて、概念や研究者がごちゃごちゃしてきたときに読むといい本だなと思いました。
ちなみに、苦手を克服するために読んだ統計の歴史の本はこちらです。 フィッシャーがすごく歪んだ人物だったので、分散分析がなんとなく呪われているように思えてくるほどでした。
- 作者: デイヴィッド・サルツブルグ,竹内惠行、熊谷悦生
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2010/04/01
- メディア: 文庫
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何事も、多様な方法で学びなおし、定着を図るのがよいようです。また少し、賢くなれました。
有斐閣の『やさしい教育心理学』は、下記の記事で少しだけ紹介しています。
psychologicalbookshelf.hatenablog.com
掘り下げ系の心理学史の鉄板はこちら。
『オオカミ少女はいなかった――心理学の神話をめぐる冒険』
鈴木光太郎 新曜社 2008年
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