『ウィニコットとの対話』
ブレット・カー(著) 妙木 浩之・津野 千文 (翻訳)
おひさしぶりです。
子どもも生まれたし、心理学の勉強がはかどるはずだ、と思っているときに見かけて買ったのが、『ウィニコットとの対話』。
ウィニコットは精神分析の実践家、理論家なわけですが、大学のときに授業でなんとなく聞いて以降、いまいち丁寧に勉強するチャンスがなかったのですよね。しかし、「good enough mother」とか、子育て中に知っておいたらよさそうな用語もウィニコットはたくさん作っているわけで、これは、いまでしょ、となりました。
4000円(+税)。チーン。
保育料とかでスッカラカンの財布から出しましたよ。
構成がすごく変わっている本で、死んでしまったウィニコットを、あの世から呼び出して対話します。対話の相手は著者であるブレット・カー。イギリスの、こちらも精神分析家だそうです。
呼び出して…対話…?やばくね…?日本にそういう新興宗教あるよね…って思っちゃうよね…。
内容はすごく濃厚で、ウィニコットを研究しているブレット・カーが、論文・治療の記録・手紙など、ウィニコットが残したいろいろな文書を研究していて、それでもあえて確認したいこととかを聞いていくスタイルです。
濃厚。とにかく濃厚。
で、読んでる途中で思うわけです、こちらとしては。
「もしかしてこれ、一言一句に引用元の文書があるんじゃないの?」
…あったよね。あとがき読んだらそのように書いてありました。
どこぞの新興宗教の霊言とは違い、ウィニコットのセリフすべてに実際の文書の裏付けがあるという…。つよい…。
こういう地道な研究スタイルって、いまの日本でできるのだろうか、なんて思ってしまいました。執念にも似た研究姿勢。
最後には精神分析やウィニコットの関係者の人物名簿までついていて、勉強になりまくりました。人物録の部分は辞書的にも使えそうです。
内容としては、ウィニコットの私生活も含めて、時間の流れの通りに理論を紹介しています。理論だけでなく、意図も含めて説明してくれるので、わかりやすかったです。戦争中の子どもに接していて思いついたアイディアなんだな、とか、たくさんの患者さんに次々会う中で考えたアイディアなんだな、とか、背景を知ると納得度が高いです。
メラニー・クラインとの関係も詳細に説明されています。
ウィニコットについてのあらましはこちら。
臨床心理学を勉強している人、子育てをしているかつての心理学徒などにおすすめです。
私は今度、こちらにもチャレンジしてみたいと思います。
精神分析、キテる!(自分的に。)
『ベイシック・フロイト』
カーン(著) 妙木 浩之 (監修)