『思春期の人間関係―両親・先生・友だち』
加藤隆勝 大日本図書 1984年
大日本図書
売り上げランキング: 1,801,302
あ、Amazonに、書影がない…?!
…のもしかたないなあ、と思うほど古い本です。1984年。先日博士号を取得したわたくしの生年が1987年ですから、まあしかたないか、という感じですね。しかも、新書だし。
なんでこんな古い本読んだのよ、というと、加藤先生がわたしの先生の先生で、お会いしたことはないんですが、どんなテイストだったのかな?とふと気になったからです。
Wikipediaで調べてみたら、ご存命でした。長生き。
『思春期の人間関係―両親・先生・友だち』は、2015年を数えた現在において、実際的に役に立つことが書いてある本だとは言えないのが正直なところです。ですが、そんなことのために読んだんじゃないので別にいいです。
感じたかったんですよね、時代の…雰囲気…ってやつを…。
何言ってんだこいつ、っていま思ったでしょう?うん、わたしも思った。
もうちょっと頭がまともな人の言葉で言うと、「昔の青年心理学は何を発信していたか」とか、「昔の青年心理学のユーザーは何を求めていたか」といったところが知りたかったから読んだ、というところでしょうか。
約30年前の青年心理学のユーザー、つまり、親や教師は、非行や校内暴力を中心とした、なんというか「大ハッスル」している青年たちへの対応に苦慮していたようです。そこへ、青年心理学者たちは、記述的データを読み解くことによって、理解への扉を開こうと試みたのでした。
記述的データというのは、たとえば、高校生にアンケート取って、「この質問に“はい”と回答したのは42%、“いいえ”と回答したのは58%、つまり、高校生は××について、やや否定的かも~」というように使うようなデータの利用の仕方…かな…。(こんな雑な解説を先生に見られたら叱られるような気がする。)
現在の心理学では、コンピューターによって大量のデータを簡単に扱うことができるようになったので、複雑な計算を必要とする、関連研究(こう思っている人はこういうことをする傾向にある、というような分析方法…かな…こんな雑な解説を先生に見られたら叱られるような気がする)などが盛んに行われています。
ですが、30年前は30年前で、青年心理学者たちは、貧弱なコンピューターをポコポコ叩きながら、そのとき世に必要とされている情報を提供していたのでしょうね。いや、叩いてなかったかもしれませんけどね。
分析の程度としては、現在だったら紀要レベルでしょうね。Nもたいしたことありません。というか、中高生を対象としたデータでこの程度のNなら、卒論レベルですね。
しかし、人間関係に焦点を当てた理解の試みは、いま読んでも面白みがありました。一方で、せっかく人間関係に焦点を当てたのだったら、介入への示唆がたくさんありそうなのに、そのへんには言及がなくて、ややがっかりしました。でも、臨床心理士の運用開始が1988年のようですから、当然といえば当然です。介入専門職がいなかったのなら、介入への示唆なんかしてもしょうがないですもんね。
いやはや、時代を感じます。勉強になりました。
なお、『思春期の人間関係―両親・先生・友だち』の執筆者には、こちらの本を書かれた落合先生も含まれております。
『青年期における孤独感の構造』
落合良行 風間書房 1989年
『青年期における孤独感の構造』は、以前、以下の記事でも少し紹介しています。
psychologicalbookshelf.hatenablog.com