『大人の友情』
『大人の友情』、です。
河合先生は多作でした。そして、この本は、おそらく遺作と言っていいくらいには後期の本です。
Wikipediaで著作のリストを見る限りでは、そのようです。
エッセイでしょうね、これは。
『大人の友情』は、河合先生自身の「大人の友情」のエピソードを述べながら、「大人の友情」の特徴や意味について思索した本です。
わたしは、子どものときからあんまり友だちがいなくて、さらに、「友情超大事にしろよ!!」という熱い私立高校にうっかり入学してしまってヘロヘロに疲弊して、という殺伐とした過去を持っていて、「友情」という言葉には憧れとアレルギー反応の両方を有していますから、読まずにはいられませんでした。
考えてみると、憧れとアレルギー反応って、一緒に持つと苦しみしかないですね。
知人に、卵アレルギーなのにお菓子大好き、という人がいましたが、アレルギー反応に苦しみながらクッキーとか食べてましたね。食べれない分だけ憧れが強まってしまうのでしょうね。
ないものねだりは人間の性です。
かく言うわたしも、友情に憧れつつ、人間に近寄ると心理的に混乱するというアレルギー反応がありましてね、こわいので、人間は、紙の上で楽しむ程度にしています。論文とかね。本とかね。
『大人の友情』は、まだ大人になっていない人で、友情で苦しい思いをしている人が読んだら救われると思うし、逆に大人になっていて、友情で苦しんでいない人が、自分を確認するために読んでも身になると思います。
人は一人では人であることができないとしたら、苦しくてもつらくても、友情という活動に参加することは避けられず、だとしたら、本でも読んでなんとかやり切るしかないんじゃないかな、と、アラサーになって、思ったりします。
『大人の友情』は、河合先生の単著の中の後期著作ですが、共著の中の後期著作として、こちらもおすすめです。
『生きるとは、自分の物語をつくること』
新潮社
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