『子どもと悪』
中古で100円だったので買って読みました、『子どもと悪』。大学のときに遊戯療法の先生が激推ししていた記憶があります。
自分の子育ても、「食わす・寝かす・遊ばす」から、だんだんと「善悪の判断を教える」とかの比重が高まっていくのだな、と思ったので、読むにはいい時期でした。
研究の本ではないので、一つの意見として読むのがいいかと思います。ただし、やはり臨床家として経験豊富な河合隼雄ですので、ところどころ鋭い指摘がある、という感じです。鋭い指摘の鋭さは、やはり河合隼雄、といった感じです。
しかし、時代とともに古びてきているというのが全体としての印象です。河合隼雄の頃は、「モノがあってお金もあるのに心のことだけがうまくいかない」人というのが臨床心理学のお客さんだったわけですが、いまは違うわけです。「モノもない、お金もない、心も荒んでいる」みたいなのが社会問題化してきています。子どもの問題で最近話題なのは貧困問題ですもんね。(前からそういう子どもはいたのでしょうが、臨床心理学はお高くとまっていたので、お客として相手をしていなかった可能性があります。貧困は常にあったけれど、いまほど明るみに出ていなかったのかもしれません。)ですので、そのへんは、時代を感じながら、目を細くして読んだふりしておくのがいいと思います。
援助交際の話もちょっと出てくるのですが、売った女子高生のことばかりで、買った成人男性への言及や考察がまったくないので、時代だなあと思いました。売り買いされているからには、買っている人がいて、買っている人にも何かの心理が働いていると思うんですけどね。当時は買うほうに言及する必要はないと考えられていたのでしょう。
親として勉強になる部分は少なくありませんでしたが、全体として、時代を感じる筆致でした。
なお、あとがきに、「悪という問題は難しすぎてあまりうまく書けなかった」(大意)というようなことが書いてあったので、もしかしたらご本人もあまり納得いっていない出来だったのかもしれません。
でも、こういう本を親や教師が読んで勉強していた時代があったというのはいいことです。いまは売れることを狙って飛ばしたタイトルをつけた本ばかりたくさん出版されています。それよりは、こういう地味な本に読者がしっかりついていた時代がうらやましいです。
河合隼雄の本は、すでに3冊紹介していますね。
今後、新たに読むことがあったら、また紹介したいと思います。
psychologicalbookshelf.hatenablog.com
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