私家版・心理学の本棚

じょー、本を読んでいろいろ書くことを決意。

『社会調査のための計量テキスト分析―内容分析の継承と発展を目指して―』(樋口耕一)

『社会調査のための計量テキスト分析―内容分析の継承と発展を目指して―』

樋口耕一・著 ナカニシヤ出版 2014年

 『社会調査のための計量テキスト分析―内容分析の継承と発展を目指して―【第2版】KH Coderオフィシャルブック』

樋口耕一・著 ナカニシヤ出版 2020年  

 

あれっ?!新作(新版)出てますね?!?!赤から青にチェンジ!!!

KH Coderの使い方の本…でもあるのですが、そのまえに、計量テキスト分析の本、です。計量テキスト分析をやるためのフリーソフトがKH Coderなんですね。そして、計量テキスト分析というのは、内容分析という方法の発展形です。

計量テキスト分析は、テキストから語を抜き出して、数量的に分析する手法とでもいえばいいでしょうか。作文とか面接の逐語録とか新聞記事とか、テキストの形式になっていれば、なんでも分析できます。しかも、フリーソフトで。

そしてそのフリーソフトはここ↓にあります。著者の樋口先生お手製です。

khcoder.net

最近は、株式会社SCREENアドバンストシステムソリューションズの主催で、樋口先生が講師のセミナーが定期的に開かれていたのですが、新型コロナウイルスの影響でこの春のセミナーから延期等の対応がとられているようです。

www.screen.co.jp

私も2018年~2019年にかけて、初級編とステップアップ編に参加させてもらいましたが、樋口先生の人柄がとてもよかったので、行ってよかったと思いました。

『社会調査のための計量テキスト分析―内容分析の継承と発展を目指して―』の中にも、夏目漱石の『こころ』を題材として分析手順を紹介する章があるのですが、樋口先生の見た目がやや古典的な文学青年風で(結婚してお子さんもいらっしゃるので、青年というのも変なのですが)、「まさに夏目漱石とか読んでそう!」という感じなのがたまらなかったですね。しかし、文学青年風でありながら、社会学者だというギャップ(?)もたまりません。

樋口先生が社会学者であることからもわかるように、計量テキスト分析自体は心理学から提案された手法ではありませんが、利用は増えてきているようです。

樋口先生は、セミナーで、高史明先生の研究を褒めていました。高先生は社会心理学者ですから、やはり、心理学にも計量テキスト分析の波はきていると見ていいでしょう。 

 

質問紙調査や実験は結果がはっきりしていていいですが、一方で、心理学の研究は、雑多なものを扱いきれていなかった面もあるのではないでしょうか。そこを、作文データなどの計量テキスト分析で埋めていけば、「法則も、雑多なものも」というように、実際の生活で人々が感じ考えていることから乖離しすぎない心理学の研究が実現されるものと思います。

個人的には、卒論でぜひチャレンジしてほしいと思います。なぜかというと、「お客様アンケート」みたいなものの分析に使えるからです。ソフトも無料だし。

大学は就職予備校ではありませんが、大学で学んだ手法を社会に出てからも活用できる人が増えることはいいことです。(それでこそ、大学が社会貢献しているともいえるでしょう。)ですので、「卒業後も使えるスキルを身につけたいな~」という人は、計量テキスト分析にぜひ挑戦してみましょう。

 

樋口先生が、KH Coder公式Twitterで紹介していた、下記の本も気になるところです。

『やってみよう テキストマイニング―自由回答アンケートの分析に挑戦!―』

牛澤賢二(著) 朝倉書店 2018年 

やってみよう テキストマイニング ―自由回答アンケートの分析に挑戦! ―

やってみよう テキストマイニング ―自由回答アンケートの分析に挑戦! ―

  • 作者:牛澤 賢二
  • 発売日: 2018/08/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)