私家版・心理学の本棚

じょー、本を読んでいろいろ書くことを決意。

『貧困の精神病理』(大平健)

『貧困の精神病理』

大平健 岩波書店 1996年

 

『やさしさの精神病理』、『豊かさの精神病理』、と読んできたわたしですが、『貧困の精神病理』もちゃんと読みました。大平健、始まりの書ですね。

おもしろかったです。精神病理学というのが何なのかがわかりました。病理学を精神(科)領域に応用したものなのですね。納得。

『貧困の精神病理』は、副題にあるように、ペルーの社会についての考察です。考察、といっても、ちゃんとペルーに住んで、いろいろ関わって、書きとめて、整理したものなので、机上の空論ではもちろんありません。『やさしさ~』や『ゆたかさ~』での大平先生は、部屋にこもってばかりでしたが(精神科医だからね)、『貧困の~』ではアクティブです。

貧困が繰り返されるという現象について、精神構造が受け継がれるためであると考察しています。精神構造についての考察では、父性とか母性とか、実に精神科医らしい語が用いられています。全体を通して、繰り返される「貧困」という経済的状況の発生プロセスをきれいに描いているように感じられて、読んでいてすっきりしました。

ともあれ、同時に、前2冊について感じた、「そういう事例ばっかり挙げてるんではないの」という疑問はやっぱり浮かびましたけれども。

なかなか良い読書でした。

日本でも、貧困について関心が高まっていますので、他の国での貧困を考えつつ、自分なりに日本の貧困を考えるために手に取るには最適な本だと思います。

 

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