私家版・心理学の本棚

じょー、本を読んでいろいろ書くことを決意。

『子どもという価値』(柏木惠子)

『子どもという価値――少子化時代の女性の心理――』

柏木惠子・著 中公新書 2001年

 

 

2年ぶりの更新ですね。

自分のことをする時間が全くないまま,3人目の子どもを産んでしまいました。もともとなかった自分の時間が戻ってくる気配,ゼロ。読書のほうも捗るわけもなく…。

厳しい環境ですが,なんとか,1ページでも多く読めるようにがんばっていきたいものです。

 

さて,第3子出産の入院中,『子どもという価値』を読みました。

柏木惠子先生はもっと評価されていいと思いますね。

2001年の本なのですが,内容が全然古びていないです。

2022年の出生数が80万人を割ったことで,少子化が加速していることが確定しきったわけですが,この本を読めば,少子化少子化の加速は当然のことだということがわかります。

柏木先生によると,「産んだらほぼ必ず育つ」という,衛生や医療の発達した社会では,女性は「希望の人数ぴったりに産む」ようになります。そうすると,「育てられる程度の人数を決めて,その人数だけ産む」ようになっていきます。その際,社会が親による養育を当然のことと押し付けてくると,「育てられる人数」が減るので,少子化するというわけです。

また,男女ともに寿命が延びているため,親業が終わった後の人生のことも考えなければなりません。とはいえ,子どもが成人してから趣味やボランティアなどを始めるのでは遅いので,ちょっと早めに始めておこうと考えはじめます。そのためには,子育ての終了時期を前倒ししたほうがいいので,ここでも子どもの人数を減らすようにという判断が行われます。

その結果,どこも2人きょうだいばっかりになりましたとさ。あと,女性に押し付けられた役割に辟易して結婚しない人も増えているので,「結婚している人は子どもを2人産み,結婚していない人は当然子どもを持たない」という社会状況により,生まれる子どもはどんどん減っていくんですね。

そうすると,対策は,(1)結婚しがいのある男性を増やして結婚自体を増やす,(2)子育ての際に家庭が背負う負担を軽減する,ということになるのですが,まあそのどちらも放置して2022年まできましたよね,日本。そして輝く出生減!

ということで,副題の「少子化時代の女性の心理」というのは,「女性の心理が少子化を進めているので,女性が結婚したい,子どもを持ちたい,3人以上持ちたいと思えるような対策をしないといけませんよ」という意味があったのかなと思います。

20年経っても古びない『子どもという価値』,勉強になるのでお勧めです。

 

柏木先生の『父親になる,父親をする』も前に読んで,とてもよかったです。

紹介していなかった気がするので,またいずれブログに書きたいと思います。